012:砂漠の水

 極彩色のものに、苦労して運んできた水をぶちまける。
 緑色をした床から伸びる柱が、風によってさわさわと音を立てている。周囲に広がる景色は、風が吹けばたちまち形を変える黄金色の大地。
 天上でこちらを焼くように照りつける太陽を睨み、流れ落ちる汗を拭った。
 早く中に戻ろう。こんな所にいつまでもいるものじゃない。
 空になった水瓶を背負子に戻し、開きっぱなしにしていた天窓から梯子を伝い、中へと戻った。


 最下層まで戻ると、薄暗い倉庫の棚に、空になった無数の水瓶が並べられていた。仲間たちは既に帰ってきていたらしい。
 ただいま。返ってくる言葉はない。
 水瓶を降ろし、中を簡単に拭いてから、他と同じように空いた棚に並べておく。こうしておけば、また明日の水が溜まる。
 ふわあ、と欠伸をひとつ。家に帰るよりは、仮眠室で眠ったほうがいいだろう。
 背負子を倉庫の隅に片付け、灯されたままだった蝋燭を吹き消した。


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